今回の執筆は教科書の構成と内容を大きく見直す機会となりました。全体として最近の研究成果を取り入れるとともに、世界史理解のバランスをとるように努めました。私が担当した部分での新しさとしては、下記の点を挙げることができます。
従来の地域名称「内陸アジア」を「中央ユーラシア」に改め、遊牧民の活動が東アジアや西アジアなどユーラシアの各地に与えた影響や相互関係が理解しやすくなるようにしました。中央ユーラシアを統合したモンゴル帝国については、同時代の東西交流の説明を拡充し、ティムール朝はモンゴル帝国に続けて解説することで両者の関係性がわかるように工夫しました。
西アジア関係ではイスラーム教成立後の記述を一新し、イスラーム世界の広がりと役割をより鮮明とするように努めました。文化面にも目配りしたほか、オスマン帝国については成立から近代に至るまで見通せるように配慮し、現代の中東については重要なテーマとしてパレスチナ問題とイスラーム主義の展開に留意しました。
また、図版については歴史的なイメージを喚起するものを採用しました。たとえば、世界地図「混一疆理歴代国都之図」(教科書147頁)などは是非じっくりと見ていただきたいと思います。